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ありがとうかばん30②
2013/05/25(Sat)
カバン30


ずいぶん間が空いてしまいましたが、次はかばん30歌合せについて。

□ゲストの石川美南キャプテン率いる、
東直子、柳谷あゆみの「とりつくダマスカスしま」チーム
■同じくゲストの笹公人キャプテン率いる、
山田航、伊波真人の「シダックス」チームの対戦です。
くじ引きでまさかの女子チームと男子チームに分かれ、
始まる前から勝負の行方がうっすらと…

記憶がかなりあやしく、出演者の方々の発言はそのままではなく、
印象に残ったところだけかなり乱暴にまとめています。
あまりにちがっていたら教えてください。

◎題「いよいよ」
■「いよいよね」教室の窓に迫りくる宇宙母船につぶやくきみは
□ほんとうのことは言わない凧【ルビ;いかのぼり】いよいよ白い今日の空です

■チームが言い淀んでいるうちに、□チームは■の歌について、
「宇宙母船」という語はいいけれどと評価しつつ、
描かれている状況がいかにもすぎる、
お題の取り入れ方が単純すぎ、といきなり鮮やかな先制パンチ。
■チームもその後□の歌について、
全体が白っぽくてぼやける、アクセントがほしい、
二句までがどこにかかるかわからないなど意見するが、
ことごとく返り討ちにあい、
最後は笹キャプテン、■の歌は井辻朱美さんの作風受けているのでは、
かばん30周年を祝う気持ちも汲んでほしい、
と会場を沸かせる、でも事実上敗北宣言。
結果は会場の拍手で、短歌も批評も□チームの勝利。
作者は■笹公人□東直子

◎題「ひらく」
■冬晴れに逐はれし雪が開き癖なほらぬ『春と修羅』に滲みぬ
□大屋根をちいさくひらき夏の夜のグランドピアノは羽化するアゲハ

□チーム石川キャプテン、□の歌について、
グランドピアノをちいさくひらくときは静かな曲を弾くとき。
アゲハの羽化の静けさと聴覚的にもうまく合っている。
大小大小という視覚的な忙しさも必然によるもの、
と自チームの弱点をさりげなくカバーしながら、
読みを広げてくれるさすがの評。
■チームは羽化の時間帯などに言及するもやはりちょっと弱い。
■の歌については□チームから「開き癖」という言葉はいいが、
これを使いたかっただけという感じ。
雪が「逐はれし」という表現がしっくりこない、効果が感じられない、
など意見が出たが、
それは関東の人だから。「逐はれし」には雪国の人間の実感が込められている。
という山田航さんの反撃がかなりの説得力。
結局短歌は■、批評は□が勝利。批評は僅差でした。
作者は■山田航□伊波真人

◎題「かばん」
■情うすき人かもしれず空洞の多き鞄に用紙落とす手
□つつがなく故郷は暮れて万緑の駅舎に鞄売りかばん売る

ようやくエンジンがかかってきた感じの■チーム。
□の歌について、つつがなく、は置きにいってる感じ、
暮れと万緑の駅舎は情景的に合わない、鞄の表記を変えた意図が不明、
など次々と意見を出す。
■の歌については、「空洞の多きかばん」というのが、
ポケットが多い鞄なのか、それともたんに中身が少ない鞄なのか、
それによって情うすきと合っているのかどうか、
など議論が交わされました。
最後の「手」が致命的によくない、と、
結果的に自作をばっさり斬った柳谷さんの潔さもかっこよかった。
結果、短歌、批評とも■チームが勝利、
歌合せ全体の勝敗は結局じゃんけんで、
とりつくダマスカスしまチームの勝ちでした。

個人的には、美南ちゃんの美しい声と淀みない口調で、
駆け引きしながらも最終的に相手チームに致命傷を負わせる評、
笹さんの場を盛り上げるエンターテナーっぷり、
そして山田航さんの急加速具合がとても印象に残っています。

短歌は山田さんの「冬晴れに」と柳谷さんの「情うすき」が好きです。
開き癖がついているページは、『永訣の朝』がぴったり。
あめゆじゅとてちてけじゃ。切ないです。
そして用紙は婚姻届か、離婚届のような人生を決める紙。
そんな大事なものを裸で空っぽの鞄に無造作に落とす手は、
たしかに情うすきひとの手。本人は気付いていないだろうけれど。
観察眼が光ります。

ああ、面白かった。
でもこのレポートでどれぐらいあの面白さが伝わるだろう。。。
長くなりました。おわります。
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ありがとうかばん30①
2013/05/14(Tue)
昨日、所属誌「かばん」の30周年イベントに参加してきました。

本当にたくさんの方にご来場いただき、どうもありがとうございました。
そしてあれだけのイベントを作り上げてくださった高柳蕗子さん、西崎憲さんはじめ、
たくさんのスタッフのみなさん、どうもありがとうございました。

夢のような時間で記憶あやしいところも多々ありますが、
箇条書きで感想を書きたいと思います。

・トークショー「短歌の相談室」
穂村弘さん、佐藤弓生さん、佐藤文香さんが会員の質問に答えるコーナー。
面白くてためになる、素晴らしいトークショーでした。
佐藤文香さんのお話、はじめて聴いたのですが、
さすが俳句の人!って感じで、言葉にキレがあって無駄がなく、
すごく魅力的な方でした。
ざっくばらんなのにツボは丁寧に押さえていく話し方。
音楽PVを観ながら作句をするなど、実践的な話もされていて面白かったです。
引用も的確だったし、うんうんとすごく分かるお話でした。
穂村さんのお話の中では、自己完結と言われてしまう短歌について、
おなじ自己完結でも詠み手の姿勢によって読者の印象は全然異なる、
というのがすごく参考になりました。
読者として未知のものを提示されたとき、
それを作者も下から見上げているような敬虔さが感じ取れたら、
わからないものを提示されたことに対する苛立ちは少ないという。
そういった本質的な話を受けて、
弓生さんが丁寧に具体的なアドバイスをされていて、チームワークも絶妙でした。
生きてる文語と死んでる口語の話も面白かったなあ。
口語ベースの歌に違和感なく文語がなじんでいる歌はすごく魅力的だとおもう。
匙加減はとても難しいけれど…
会場質問から出た枕詞の話も面白かったです。
佐藤文香さんが俳句で枕詞と季語入れたら他に言うことなくなる(笑)と言いつつ、
でも枕詞に新しいいのち(だったかな。空気だったかな?)を吹き込めたら、と思って使う、
とおっしゃっていて、それもとても心に響きました。
言葉に新しいいのちを吹き込むって考え方、とっても素敵。

お三方の話をその場でまとめつつ進行された睦月都さんもすごかった!
お疲れさまでした。

そんな感じでスタートから非常に勉強になるお話がうかがえたトークショーでした。
そしてこのペースで書いていたら全部の感想書き終えるのに何日かかるのだろう。。。

ひとまず今日はここまでにします。


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かばん3月号
2013/03/22(Fri)
image.jpg

かばん3月号、今年度最後のかばんです。
編集部のみなさん一年間お疲れさまでした。
かばんは毎年編集長が変わるので4月からはまた表紙などガラリと変わるはず。
新しいかばんもまた楽しみです。

さて3月号、ゲストルームはひぐらしひなつさん。
もともと好きな歌人さんなのですが、久しぶりに作品を読めてうれしかったです

告げるべき別れ潰えて静けさのあふれるカフェに光るドーナツ
着地点見つけて赦されたようにセーターの腕を嗅いで笑った
観覧車は夏の遺骨として今も雷雨にずっとやられっぱなし

(「貝と椅子 」ひぐらしひなつ より)

会員の鳥栖なおこさんの短編「愛情伝達殺人 」 も怖くておもしろかった。

さて会員作品から五首選+αです。

着膨れで体がでかい(だからって強く見えないのが残念ね) 大澤サトシ
うーん。これは残念。残念感がすごく伝わってきます。
でも絶対いい人ですね。そして愛されている。
くだけた口語表現や終助詞などが、
主体のキャラクターと二人の関係をうまく描き出していています。
気持ちもほのぼの着膨れますね。

色漆の剥げかかりたる金剛力士 武者震いすればこの雪が降る 井辻朱美
うってかわってこちらの金剛力士は、色漆が剥げかかろうがすごい迫力。
無駄をこそげ落とした肉体の躍動感と静かに舞い落ちる雪の、
見事な対比、そしてマッチング。さすがです。

電源が切れて四角い暗闇に映ったぼくとすこし目が合う ながや宏高
そんなに特別な状況を詠んでいる訳ではないのに、
ちょっとねじれていて、落ち着かない。
うまく説明できませんが、
普段生活のなかでちょっとねじれた感じで現実を感受しても、
無意識に修正して生活しているようなところを丁寧に掬い取って歌にされていて、
読む側をぞわぞわさせてくれます。

こんな知識、人生で使うはずないと思うだろうし、だといいけれど。 柳谷あゆみ
「こんな知識、人生で使うはずない」という教わる側によくある価値観を、
教える側から書いているところが新鮮です。
そして、「だといいけれど。」がすごく怖い。
え、どんな知識!?と考えさせられます。

バゲットのにおいは不意にわたりきてすぎさきさんとささやく夕べ 飯島章友
「パン屋のパンセ」を読んだ人はみんなそうじゃないかな、
と思わせてくれる残された者たちにやさしい歌。
杉崎さんを知らない人にも「すぎさきさん」の人柄を思わせるのでは。
下句の「さ」音の多用が儚させつなさを増幅しています。

青空の青を映さぬ薄氷(ルビ:うすらひ)やスカイツリーは映ることあり 久保明
発見の歌。久保さんの下町を詠んだ歌がわたしの下町観を形成しています。

イヌワシは滑空をして金網にぶつからないのがすこし残念 山下一路
あー危ない!と思うとき、どこかでそうなることをかすかに期待していること、
確かにあるかもしれません。部外者の視線。

一夜明け辺りはいちめん雪となり美意識なるもの試されていた 十倉れい
雪景色の美しさを詠むのではないところがおもしろいです。
あるがままに世界を感受できず、
つねに自意識のフィルターを通して見てしまうかなしみ。


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かばん2月号五首選
2013/02/28(Thu)
image.jpg

久しぶりの更新です。
そしこれまた久しぶりにかばん五首選しました。
2月号、いい作品が多くてかなり悩みました。

床に差す光にやわく手をひたし次はさわれぬものに生まれる
雨宮真由


やわらかい音の積み重ねが心地よい一首。
光に手を「ひたし」たときのほんのりとした感触から、
「さわれぬもの」への思いまで体感を通して一緒に跳べる感じがします。
連作のタイトルを「さわれぬもの」にしちゃったのはちょっともったいなかったかな。

「タフでかつ従順」という要件を満たして残る 僕は残れない
あまねそう


結句の字余りが凄い効果を生んでいると思います。
字面から絞り出すような声が聞こえてきて、すごく心に迫ってくる。
一字空けの前まで主体自身のことを言ってるように読ませておいて、
の結句なのでなおさら効果を生んでいます。

親密な暗闇に身をあずけつつ確かめている金星の位置
柴田瞳
信頼が生む沈黙よカーテンはにぶい光をたくわてゆく


この歌とどちらにしようか迷いましたが、
より幸せが伝わってくる「親密な〜」のほうを選びました。
「親密な暗闇」も「暗闇に身をあずけ」るも、
さりげなく置かれていますがとても巧い表現。
「暗闇」の位置に一緒にいる相手を感じさせつつ、
そう書かずにワンクッション入れることで、
精神的な一体感を感じさせます。

思い出すたびに薄れてゆくひとを冬、襟立ててかばいながら
法橋ひらく
ざわめきのなかに沈んだ聴覚を置き去りにして雪のあかるさ


法橋さんの作品もどれを選ぶかすごく悩みました。
一首目は説明抜きにしてすごく好きだったので、
五首選ではそちらを選びましたが、
二つ目の作品も聴覚と視覚のありかたを非常に巧く表現されていて、
いい歌だとおもいます。
体言止めとひらがな表記も効果的。

五首以外で気になった歌を。

県鳥の首のラインを愛してる僕らはずっと埼玉の子だ
丸広で市村夫妻が食材を買ってた噂を誇らしそうに
大澤サトシ


これは埼玉っ子としては触れずにいられません。
一首目はおそらく本物のシラコバトではなく、
コバトンじゃないかとおもうのですが。
子供がぶら下がりたくなるあのライン。
わたしもコバトン大好きです。
二首目は受け取れる人が非常に限られた球だと思うのですが、
よく投げましたね(笑)丸広ってどこ?市村夫妻って誰?ってひとが多そう。。。
でもこのへんじゃヤオコーに篠原涼子がいた!とか話題になるんですよね(笑)

ああ、時間切れです。大澤さんの短歌で盛り上がりすぎました。
幼稚園バスがやってきます。
運転手さんそのバスに〜僕も乗っけて。。。
いや、時間がないんです。
以下コメント付けられなくてすみません。

ツムギアリの一匹としてあゆみ出づ駅前スクランブル交差点
雨谷忠彦

灰色の空から降りた遮断機が遮断したものから風が吹く
若草のみち

本当はカレーが食べたかったなど列の後ろで呟かぬこと
川合大祐

店じゅうのスノードームをひとつずつ返す 真水にただよう雪の
鯨井可菜子
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かばん6月号五首選
2012/06/28(Thu)
1206_convert_20120628172738.jpg


かばん6月号、歌作品も、特集、小特集もとても面白く、
読み応え満点の特集号でした。

かばん三兄弟もなつかしく…優しくすてきなお兄さまがたに、
歌会でお会いするのがとてもたのしみで、
長男植松さんの恋のうたに、次男千葉さんの青春歌に、
三男中沢さんとは即興で二人題詠をしたこともあり、
作品にもきゅんきゅんさせられっぱなしでした。

さて、五首選+αです。

あらいざらい 波打ちぎわにあのときの身重のわたしがつけた足跡
飯田有子


一読して今月のナンバーワンはこの歌!とおもいました。
「身重」という語がこの歌に人生を背負わせるような重みを与えています。
そして字余り一字あけで初句に置かれた「あらいざらい」の清新さ。
母でありながら母としてではない等身大の裸の「わたし」が、
すっと立ちあがってくる一首です。

電線にみちびかれつつ電柱はひとりきたりぬ雨後の地球を
佐藤弓生

ミツバチのささやききこゆ窓に耳あたためている秋のおわりは
佐藤弓生

どちらも文語と修辞のしなやかさを感じるとても魅力的な作品。
「ひとりきたりぬ」や「ささやききこゆ」の音の美しさ、質感を、
口語で出すのはなかなか難しいとおもう。
擬人法のおもしろさ、倒置で着地するときに残る余韻、
じっくりと味わえる作品ですね。

延滞金 ツタヤ」で検索するほどに無気力だった私の朝に
睦月 都


「無気力」ぐあいがものすごく伝わってきますね。
男性だと返しに行っちゃうほうが楽っておもうのかな、
とにかく外に出たくないっていうこの感覚、よくわかります。

てぬぐいを腰にさしこみ青年がゴムやわらかき人力車引く
井辻朱美


「ゴムやわらかき」が秀逸。
「青年」の動きや筋肉のしなやかさまで想像させます。

まだうれしい、と気づいてバスの先見れば暴風雨ほぼ降りしきるさくら  
柳谷あゆみ


毎回柳谷さんのお歌入れてしまってますね。完全にファンです。
「まだうれしい、と気づいて」ってすごい。
この湧きあがるようなむふふ感をあっさり歌に詠んでしまうとは!
春の気分にぴったりなんですが、
あえてふわふわした情景と合わせたりしないところがニクイです。

今月は育児、子育て(イクメン短歌も!)の連作がたくさんあって、
激しく共感しました。

武将の名付けられた子は潔く「乳は要らん」と結ばれる口
本多忠義


0歳児がいるわが家ではどの歌もほんとに「そうそうそう!」でした。
掲出歌は赤ちゃんの表情はさることながらご両親の思いなども伝わってくる、
とてもいい歌だと思いました。

オルガンの音より響く歌う声じゃなくてわんわん泣き叫ぶ声
大澤サトシ


そして今年入園した子もいるわが家では大澤さんの連作も、
「あるあるある!」の連続(笑)
東上線ユーザーとしては歌会でも話題になった「東上線柄」もヒットしました。
歌会では若い女子から「フィクションとしか思えない」という発言もあり、
そうかぁ…とたしかな隔たりを感じたりもしました。

あをあをと健やかであれあとのことはわりとどうでもいい 草太よ
後藤葉菜


七夕の短冊にも「健やかであれ」という願いが溢れていますが、
「わりと」にリアルな感じがこもりましたね。


レギンスの膝伸びてゆくしゃがみこみ吾子の目を見て話す間に 
有田里絵


これもほんとに実感がこもっていますね。
ああまたレギンスの膝が伸びちゃう、でも、
やっぱりしっかり目を見て話さなくては、という親ごころ。
レギンスもジーンズもみんな膝が出てしまって。。。

お揃いの水着とゴーグル泳ぎ去る子らは人造人間めいてつやめく
三澤達世


スイミングスクールを詠んだ一連。
スクールのギャラリーでいつもぼんやり座っているわたし。
日常のいたるところにモチーフは転んでいるんだな、
と改めて反省させられました。
スイミングの子たち、一様に細くてちっちゃな水着を着て、
つやつやしてて、まさしく「人造人間」みたいに見えます。
パンツ一枚で川遊び、という風景と比べると、
ますます「人造人間」が影を帯びてくるような。
できるだけ自然におおらかに育てたいものです。

私もいましか詠めない子育ての歌をもっと詠まなくては。
子供はどんどん大きくなり、わたしの言葉はどんどん痩せてゆき、
ちょっと、いやすごく、焦ります。



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