FC2ブログ
かばん11月号
2008/11/07(Fri)
200811-1-thumbnail2.jpg

歌誌「かばん」の11月号が届きました。もう11月なんですよね~。はやい。。。

恒例の5首選です。

●倒されたドミノが開いてゆくときを 聴き間違えたことばを愛した 柳谷あゆみ

下句がすごく切なくて、読んだあと何度も頭の中をこだましました。
その後なんとなく読んでいた上句に戻って考えました。
言われたときすごく嬉しくてその言葉をよりどころにして関係を築いてきたのに、
それが聴き間違えだと気付かされたとき、
ドミノがばぁーっと倒れていくように今まで積みあげてきたいろいろな思いが拡散されていく、
そんな感じでしょうか。
悲しいけれどどこか爽快な感じがする、柳谷さんらしい一首。

●好奇心だけで小さな帆をたててぼくらは白い船に揺られる 山田航

どの歌もイメージをとても丁寧に定型に落とし込んでいて、
すごく滑らかで口当たりがいいです。
ただ、6首目(左手を奪はうとして空振つてまた頭など掻いてゐた手だ)などは、
はその立ち上がってくるイメージ自体にテレビドラマなどで見たことがあるような既視感があり、
もったいないかなと思いました。
掲出歌は「好奇心だけで帆をたてる」というところががすごく新鮮で、
一首のきれいなイメージの中でスパイスとして効いています。青春ですね。

●けのびする耳はトランペットのように離れた街の音とあわさる 三根生さくや

まず「けのび」がポイント高いです。
この言葉だけで(一部の)読者はわくわくしてこの後に期待してしまいます。
そういう言葉ってありますよね。あ、この作者はやってくれるな、と期待させてくれる言葉。
その期待を裏切らない仕上がりになっています。
「けのび」をしているときの、外界から閉ざされ神経が研ぎ澄まされていく感じを、
聴覚に託してとてもうまく表現しています。
ちなみに以前もかばんで「けのび」を詠んだ作品、あったのですが…。
「すーんとけのびするでしょう」って…記憶が曖昧ですがあの歌も好きです。

●やわらかく水のしみこむ土のこと忘れた都市に塔が生えだす 蓋炉郁

今年の夏のゲリラ豪雨、ほんとにすごかったですね。
自然災害にもろい都市の姿を描き出した一連のなかで、
最後のこの一首が一番詩的で好きでした。
雨に煙る中ににょきにょき見えるビル群はどこか不気味で、
「塔が生えだす」という表現がぴったり。
また、バベルの塔も連想され、
文明のありかたをやんわり批判する歌になっています。

●螺子山はつぶれてまはるシナプスの漏電しやすきのどもつ翁  雨谷忠彦

上句と下句のイメージが絶妙にマッチしていてすごく痛いです。
シナプスがのどから漏電する…おもわずのどを押さえてしまうような表現。
人の名前などが思い出せないのは、
実際は脳内でシナプスが繋がらないせいらしいですが、
喉元まで出掛かっているのに!ってときはのどから漏れているってほうが、
体感は近いかもしれません。

この他好きだった作品、5首選+α。
まず新入会の森雪音さんの一連がとても好きでした。

●遠い海の青い魚を見ただろう鮮魚売り場に並ぶマグロは

●象足の中にエレガントな骨格あり誰かに見せたしレントゲンフィルム


それから茂泉朋子さんの一連にはぞわぞわ~っとさせられました。

●指と指コインに重ね呼びだされそれからずっと教室にいる

そのほか…

●健全なモチーフとして美術部に走る姿を描き取られる 柴田瞳

●本当に嬉しくはない優しさへエプロンと私よくはみ出します 杉山モナミ


などもとても好きな歌。今月も読み応え満点のかばんでした。
この記事のURL | いろいろ感想文 | CM(2) | TB(0) | ▲ top
前ページ | メイン | 次ページ